これまでに、目標である資源保護的漁業を支援する基盤技術は、かなり得られ、開発したステレオカメラは水密筐体以外、
入手容易な汎用品で構成され、実用的である(図1)。また、映像のAI解析によるサクラエビ認識(図2)や、
ステレオ撮影によるサクラエビの体長測定も、かなり実用に近づいている。
図1.ステレオカメラ。上の1対のカメラ(Sony製;RX0)を筐体に収納(耐圧400m)。
図2.AIの認識結果例。青がサクラエビ、赤はサクラエビ以外(この場合オキアミ)と認識したもの。
すなわち、サクラエビ映像のAI認識では、他の生物種を誤認識するケースは非常に少なく、
映像中のサクラエビは視認できる個体の半分以上は正しく認識されている。映像の不鮮明さや個体の重なり等で100%の認識は困難であるが、
体長組成のような集団の統計的な特性の把握には、十分利用可能と考えられる。
また、ステレオカメラによるサクラエビの体長測定精度は、既知のサイズの模型の測定実験結果から40㎜程度の体長を2㎜以下の測定誤差と評価されている。
さらに、漁業者からの要望で、漁獲直後や市場でのサクラエビの体長測定システムも開発が進んでいる(図3)。
図3.漁獲物の現場体長測定システム
これは、現場で専用の測定用紙の上に漁獲物を広げてタブレットで撮影すると、AIがサクラエビを認識し、各個体の目と尾の位置を認識して体長を測定し、
体調組成を表示するシステムで、実用化に向けソフトの調整が進められている。
現在の課題は、AI認識が比較的容易と思われた「アタマグロ」については、得られた映像例が少なく、
AI認識用の教師データ(※)が不十分で、実施困難な状態にある。これは、水中照明光の問題の可能性もあり、検討を要する問題である。
ただし、漁獲物の「アタマグロ」認識については、空中の「アタマグロ」は目視で明確に認識できることから、AI認識は十分可能と考えられる。
※教師データとは、AI認識するために画像から対象物(今回はサクラエビ)を抽出し、それをAIに記憶させるためのデータのこと。数が多いほどAI認識が正確となる。今回は画像を1万枚以上学習させてある。